有酸素運動

有酸素運動とは?得られる効果と無理なく続けるための始め方

朝の公園の小道をジョギングする人
写真: Ernst Vikne / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

有酸素運動と聞いて、息を切らしながら走る姿や、スポーツウェアに身を包んでジムに通う光景を思い浮かべる人は少なくありません。しかし、健康を維持するためにそこまでハードな取り組みが必須というわけではありません。

私たちが普段何気なく行っている「歩く」という動作も、立派な有酸素運動のひとつです。日常の延長線上で少しだけ意識を変えるだけで、体には確かな変化が起こり始めます。特別な道具を揃えなくても、今日からすぐに始められるのが最大の魅力です。

有酸素運動は、一度に長時間こなすことよりも、細く長く続けるほうが体に効きます。まずは、そもそも何を有酸素運動と呼ぶのかというところから見ていきましょう。

有酸素運動とは何か

リズミカルに長く続けられる運動のこと

厚生労働省のe-ヘルスネットは、有酸素運動を「リズミカルで長時間続けられる運動」と説明しています。ジョギング、サイクリング、速歩が代表例として挙げられています。

これらの運動に共通しているのは、一定のリズムを保ちながら長時間続けられるという点です。呼吸を通じて体内に十分な酸素を取り込み、それを血液の循環によって全身の筋肉へ届けながら体を動かします。筋肉は送られてきた酸素を使い、エネルギーを作り出し続けます。短時間で力尽きてしまうのではなく、息を整えながら淡々と動作を反復できるのが特徴です。

無酸素運動との違い

一方で、重いダンベルを持ち上げる筋力トレーニングや、全力で駆け抜ける短距離走などは無酸素運動と呼ばれます。これらはごく短い時間の間に、筋肉へ強い負荷をかける運動です。

無酸素運動では、筋肉に蓄えられている糖質(グリコーゲン)を主なエネルギー源として素早く消費します。この過程で酸素を必要としません。大きな力を一瞬で発揮できる反面、すぐにエネルギーが枯渇してしまうため、長時間の継続は不可能です。

有酸素運動は、筋肉にかかる負荷が比較的軽い状態が続きます。そのため、体内の糖質だけでなく、脂肪もエネルギー源として消費されます。長く動けば動くほど脂肪が使われる割合が増えていくため、持久力の向上や体脂肪の減少に向いています。

会話できるかどうかで見分ける

自分が今やっている運動が有酸素なのか無酸素に近いのかは、呼吸の状態に注目すると簡単に見分けられます。

有酸素運動の適切なペースは、少し息が弾む程度の状態です。隣を歩く人と笑顔で会話ができる余裕があります。もし息が切れて言葉が途切れ途切れになってしまうなら、それは強度の出しすぎです。体に強い負荷がかかり、無酸素運動に近い状態になっています。

心拍数が上がりすぎると、苦しさが勝って長く続けることができません。結果として有酸素運動としての効率も下がってしまいます。運動中は「誰かと普通に話せるくらいのペース」を保つよう心がけてください。苦しい思いを我慢することが、必ずしも高い効果を生むとは限りません。

どれくらいやればいいのか

週23メッツ・時、歩行なら1日60分

厚生労働省が定める「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の推奨事項一覧では、成人は3メッツ以上の身体活動を「週23メッツ・時以上」行うことが推奨されています。メッツとは、安静にしている状態を1として、その運動が何倍のエネルギーを消費するかを表す単位です。

普通に歩く動作がおよそ3メッツに相当します。これを歩行時間に換算すると、1日あたり60分以上歩く計算になります。あわせて、World Health Organization(WHO)のファクトシートにおいても、成人は週150分以上の中強度身体活動を行うことが推奨されています。数字だけを見ると少しハードルが高く感じるかもしれません。しかし、これらはすべて細切れの時間をつなぎ合わせた合計で構いません。

1日およそ8,000歩の目安

先ほどの厚労省のガイドでは、この活動量を歩数に換算した「1日約8,000歩」という目安も示されています。

運動不足の解消を目指すとき、いきなり毎朝ランニングを始めるといった極端な変化は不要です。買い物や駅までの道のりといった日々の「移動」が積み上がって8,000歩になります。掃除や洗濯も身体活動ではありますが、歩数としては数えにくいので別枠と考えてください。

現代の生活は便利になりすぎており、意識しないと歩数はすぐに減ってしまいます。スマートフォンやスマートウォッチの歩数計機能をオンにして、自分が普段どれくらい歩いているかを確認することから始めてみてください。

まずは今より10分多く

まとまった時間が取れなくても諦める必要はありません。厚労省のe-ヘルスネットには、今より10分多く体を動かすだけでも健康寿命を延ばせるというデータが示されています。たった10分と思うかもしれませんが、1日10分の追加は1年で3,650分、およそ60時間の運動量に匹敵します。

通勤時にいつもより少しだけ遠回りしてみるのも一つの方法です。駅や商業施設ではエスカレーターを使わず、階段を選びます。あるいは、休憩時間にオフィスの周りを軽く歩いてみる。そのわずかな時間の積み重ねが、将来の体力を底上げしてくれます。

有酸素運動で変わること

持久力が上がると病気のリスクが下がる

有酸素運動を継続すると全身持久力が高まります。全身持久力の高さは、最大酸素摂取量という数値で測られます。これは1分間に体内に取り込める酸素の最大量のことです。

厚労省の資料によると、最大酸素摂取量が多い人ほど心血管系疾患の罹患率や死亡率が低いことが示されています。全身持久力は心臓や肺の働きから骨格筋まで含めた総合力で、普段どれだけ体を動かしているかと強く結びついています。これが疲れにくい体の土台になります。日常生活で階段を上っても息切れしなくなるなど、体力の向上をはっきりと実感できるようになります。

脂肪はどう減るのか

痩せるための運動として有酸素運動を選ぶ人は多いです。運動中は血液中の脂肪や、内臓脂肪、皮下脂肪がエネルギーとして使われます。

ただし、すぐに体重が落ちるわけではありません。1回の運動で消費される脂肪の量はごくわずかです。体重計の数字が劇的に変わることを期待すると、成果が見えずに挫折してしまいます。

大切なのは気長に続けることです。有酸素運動を習慣化すると、筋肉の毛細血管が発達し、脂肪をエネルギーとして使いやすい体質へと少しずつ変化していきます。数ヶ月単位で継続することで、お腹周りがすっきりしたり、服のサイズにゆとりができたりと、着実に体が引き締まっていきます。

気分と眠りへの影響

体を動かすことは、心にも良い影響を与えます。適度な運動によって心地よい疲労感が生まれ、夜の深い眠りにつながります。睡眠の質が上がれば、翌朝の目覚めもすっきりと快適なものになります。

また、リズムよく手足を動かしていると、頭の中が空っぽになっていきます。有酸素運動には、日中のストレスを和らげる効果もあります。デスクワークで考え事が行き詰まったときに外を歩くと、すっきりと頭が整理されるのはこのためです。新鮮な空気を吸いながら景色を眺めることで、凝り固まった思考がほぐれていきます。

運動の種類をどう選ぶか

有酸素運動の代表的な種類を、強度と続けやすさの軸で整理します。自分の体力やライフスタイルに合わせて選ぶことが大切です。

種類強度続けやすさ特徴
ウォーキング道具が不要でいつでも始められる
速歩普通に歩くより心拍数が上がりやすい
ジョギング消費カロリーは大きいが膝への負担に注意
自転車関節への負担が少なく長時間続けやすい

ウォーキングと速歩

ウォーキングは最も手軽な有酸素運動です。歩きやすい靴さえあれば、今すぐ始められます。運動の経験が少ない人は、まず普通のペースで歩くことからスタートしてください。

慣れてきたら、少し歩幅を広げて歩く「速歩」に切り替えると運動の強度が上がります。腕を前後にしっかり振り、かかとから着地してつま先で地面を蹴るように意識します。心拍数も適度に上がるため、基礎的な体力をつけるのに適しています。

会話ができるペースで並んで走る2人。有酸素運動の強度の目安 写真: Ronnie Macdonald / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

ジョギング

速歩よりもさらに強度が高いのがジョギングです。地面を蹴って両足が宙に浮く瞬間があるため、足腰への負担が大きくなります。消費カロリーは増えますが、その分ケガのリスクも高まります。

走る場合は、着地の衝撃を吸収してくれる専用のランニングシューズを用意することが重要です。最初はウォーキングの途中に短い距離のジョギングを混ぜるなど、体に負担をかけすぎないペースで進めてください。

自転車とエアロバイク

自転車は体重をサドルに預けるため、膝や足首への負担が少ないのが特徴です。関節に不安がある人や、体重が重めの人でも長時間続けやすい運動です。景色を楽しみながら屋外を走るサイクリングのほか、スポーツジムのエアロバイクでも同じ効果が期待できます。

ペダルを回す動作は太ももの大きな筋肉を使うため、効率よくエネルギーを消費できます。ギアを軽くして回転数を上げるように漕ぐと、有酸素運動としての効果が高まります。

天候に左右されない屋内の運動

雨の日や猛暑の日は、外に出るのが億劫になります。そんな日は、天候に左右されない方法に切り替えれば済みます。家でできる運動不足解消で紹介しているメニューも参考にしてみてください。

高さ10〜20センチほどの台を上り下りする踏み台昇降や、動画を見ながらのエアロビクス、ラジオ体操なども立派な有酸素運動です。室内用のフィットネスマシンを活用すれば、テレビを見ながらでも運動量を確保できます。家の中での運動は人目を気にせず、自分の好きなタイミングでできるのが大きな強みです。

屋内でエリプティカルマシンを使った有酸素運動 写真: Shixart1985 / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

筋トレとどちらを先にやるか

目的別の順番

自宅での宅トレなど、無酸素運動(筋トレ)と有酸素運動を組み合わせる場合は、目的に応じて順番を変えます。

体脂肪を減らしたいなら、筋トレのあとに有酸素運動を回すのが一般的な組み方です。筋トレの直後はしばらくエネルギー消費が高まった状態が続くため、その流れで歩きに出る人が多い、という理由です。スクワットなどで脚を使ったあと、そのままウォーキングに出かける。この順番なら着替えも一度で済みます。

逆に、マラソンのタイムを伸ばすなど心肺機能を高めることが最優先なら、有酸素運動を先に行います。体力が十分に余っている状態で走ることで、質の高いトレーニングができます。

同じ日に両方行う場合の工夫

同じ日に両方を行う場合、トータルの運動時間が長くなりすぎないよう調整します。

筋トレを20分行い、そのあとに有酸素運動を30分行う。これだけでも体には十分な負荷がかかります。疲れすぎて筋トレのフォームが崩れたり、集中力が切れて関節を痛めたりしないよう、余力を残して終えるのが安全です。無理をして長時間のメニューを組むと、翌日以降の疲労が抜けず、結果的に運動そのものが嫌になってしまいます。

運動が続かないときの対処法

まずは回数を目標にする

運動の習慣化に失敗する原因の多くは、ハードルを高くしすぎることです。最初から「毎日30分歩く」と決めてしまうと、雨が降った日や仕事で疲れた日に途切れてしまい、そのまま挫折してしまいます。

まずは時間を気にせず、回数を目標にします。「週に3回、とりあえず外に出て歩き出す」と決めます。外に出て、5分で帰ってきても構いません。着替えて靴を履くという行動そのものを体に覚えさせることが一番の目的です。行動のハードルを下げておけば、気が乗らない日でも足だけは動きます。

日常の動線に組み込む

生活の動線に有酸素運動を組み込んでしまうのも賢いやり方です。

仕事帰りに一つ手前の駅で降りて歩いてみる。休日の買い物は自転車を使わずに歩いていく。これなら新しく運動のための時間をひねり出す必要がありません。日常の移動がそのまま有酸素運動に変わります。わざわざ運動着に着替えなくても、健康のための活動量は確実に積み上がっていきます。特別なイベントにするのではなく、日々の生活の一部として淡々とこなしていくことが、運動を長く続ける秘訣です。

よくある質問

有酸素運動と無酸素運動はどちらを先にやるべきですか?
目的によって適した順番が変わります。脂肪を落としたい場合は、筋トレの後に有酸素運動を回す組み方が一般的です。心肺機能を高めたい場合は、体力が余っているうちに有酸素運動を先に行うほうが質の高い練習になります。
有酸素運動は毎日やってもいいですか?
疲労が蓄積していなければ毎日行っても問題ありません。ただし、膝や腰に痛みを感じる場合は休養日を設けてください。ウォーキングなどの軽い強度であれば、毎日の習慣にするのがおすすめです。
室内でも有酸素運動はできますか?
もちろん可能です。エアロバイクを使ったり、その場での足踏みや踏み台昇降を行ったりするだけでも十分な運動になります。雨の日や外に出るのが面倒なときは室内での運動を活用してください。

この記事を書いた人

Mei

習慣・宅トレ担当エディター

ZEN LABO のエディター。宅トレと「続け方」を中心に、ゼロから始める人でも無理なく運動を習慣化できる方法を発信しています。